小諸市の停車場ガーデンを視察。松本市内でも、市民協働でガーデニング空間はできるか

青木たかし

2018年11月02日 20:23

こんばんは、最年少松本市議会議員の青木たかしです。

本日は、小諸市にある停車場ガーデンを委員会として視察してきました。NPO、市民協働のモデルケースであり、とても参考になったので、ブログで共有させていただきます。

※念のため、これは私個人が計画して行った視察ではなく、建設環境委員会として計画された視察です。下記の内容は、私の視察報告書の一部を抜粋したものです。

○停車場ガーデンとは?

停車場ガーデンは、市民参加で計画され、NPOが運営する公園で、開園から10年継続しています。四季折々の草木や花、おしゃれなオープンカフェ&ショップがあり、小諸宿の本陣主屋を復元した施設ではその歴史と手仕事の魅力を体験できるようになっています。



元は、小諸城が位置していた場所であり、その後、電車の停車場となった後、周辺に民間商業施設・娯楽施設が立ち並び、月極駐車場として広がっていました。駅前の物寂しい空間を盛り上げ、元気にしようということでこの計画が立ち上がりました。

2014年に全国の市民による優れた緑地管理を選定する緑の環境デザイン賞・特別企画において、「国土交通大臣賞」を受賞されました。2008年にも計画段階で設計案に対して大臣賞を受賞されているため、2度目の受賞となるようです。


○専門家・市民・行政が三つ巴となった協働モデル

一般的に、公園管理はできるだけ手がかからないように植栽なども考えることになりますが、この公園では、指定管理者制度によって管理をNPOに委託することを前提として計画を進めました。そのことで、自分たちで管理することを前提に市民有志と専門家が一緒に、理想のガーデニングの絵を描くことにつながりました。専門家と市民と行政が三つ巴となって協働したことにこの公園の特徴があります。

まず、この場所のもつ魅力を考える上で、ワークショップを重ね、その中で出てきたのが、「花をいっぱいにしたい」「ゆっくり過ごせる空間にしたい」「おしゃれなカフェを設置したい」といったもので、実際に現実のものとなっています。



その後、造園家のとりまとめた設計案が「緑のデザイン賞」で国土交通大臣賞を受賞し、800万円を獲得したことで自由にガーデニングを行うことができたといいます。造成と建物は市の予算で設置しました。実施設計段階では、公園管理の担い手の育成も視野に入れて、「緑の学校」と「食の学校」を設置することも並行して進めており、担い手を育成した段階で公園を供用開始としたことが特徴としても挙げられています。

市民の手を借りてどれだけ巻き込み、愛着をもってもらうかが重要であり、庭の管理に関わる人を広げて、共に学びながら設計に反映させていく中で、「自分たちの庭」という意識を醸成させていったといいます。また、極力行政主導とせず、形式的なものを排して市民が自主的に進めていったことも成功要因のひとつとして紹介されました。





○当初からブレないコンセプト「食と緑でまちを元気に」

ここのカフェで提供するのは地元食材を使ったもので、ショップでは道の駅のように、地元のパン屋さんやお菓子屋さんの品物、クラフト品から農産物も販売しています。
このカフェ&ショップは、本来「公園管理棟」のはずでしたが、事務所よりも、庭と一体になった開放的でおしゃれなカフェ&ショップの方がまちの活性化につながると考え、現在の形になったといいます。ただ、カフェ運営ノウハウをNPOでは持ち合わせていなかったため、3年前から影の運営は専門業者に委託をすることとなりました。結果、効率化と料理の質向上が図られ、地域の植物を活用した商品開発にもつながっています。



今、このエリアは新しい企画として各種イベントを開催したり、夕暮れにはワインを楽しんでもらうなど、駅前のにぎわいを生み出す場所となっています。



○隣接する公共施設も再利用し、管理にも工夫を凝らす

このガーデンエリアに隣接して、小諸宿の本陣を復元した市営歴史資料館があったのですが、来館者が少なく採算が取れなかったため、2005年から6年間休館していました。このエリアの造成にあたり、公園との一体的な活用を図ろうと、こちらの管理もNPOで受託することを考えたそうです。

その際、常駐スタッフの確保が課題となっていましたが、共同ギャラリーを持ちたいと願っていた手仕事作家のグループに、作業場兼ギャラリーとして使ってもらう代わりに常駐してもらうことを発想。1年の実験活用を経て、2012年に歴史的建物の公開&手仕事ギャラリー&ショップとして再オープンするに至りました。今はNPOが指定管理者となり、手仕事グループメンバーが運営し、建物を公開しながら毎月展示会や講座を企画・開催しています。



○公園を介して生まれる、人と文化の交流

この公園は、指定管理者であるNPO法人こもろの杜が市から管理運営を受託しています。NPOスタッフは積極的に「緑の学芸員」として、いろいろなグループのやりたいことをサポートし、様々な才能を持つ人材を見つけては企画を持ちかけ、団体や人のコラボレーションを仕掛けたりしています。



若い人から年配の方まで、自分たちの生きがいや活躍、表現の場を求める人たちの交流から生まれる力を、まちの想像力につなげていきたいという願いがあるそうです。


○プロセスに大きな価値

2005年、小諸市は空地になっていた駅前のこの場所を公園とすることを決め、それ以上のことは白紙の状態のまま、市民参加のワークショップ「駅周辺まちづくり・アイデア会議」を実施し、その運営をNPO法人小諸町並み研究会に委託しました。

参加者は公募で150人(延べ4回)。テーマ別に話し合う経過で、提案を実現させたいという市民有志の動きが生まれたといいます。2007年度にその参加者の中から、専門性とやる気のある人を中心に運営計画づくりをすすめ、2008年度にNPOこもろの杜立ち上げに至りました。これを受け、市はこのNPOに運営委託する方針を固めています。

このプロセスの中で、市は設計業者とは別に施設のプロデュースを小諸町並み研究会に委託。備品一つにしても、普通なら業者入札で適当に既成品を揃える所を、「施設のコンセプトに合ったものをできるだけ安く」というスタンスで、たとえばカフェのテーブルは地元デザイナーに依頼し、予算オーバーの部分はみんなで作業を手伝いました



行政やコンサルタントが先に設計を進めてしまい、運営者をその後に選定するという手順ではなく、市民・専門家の人材集めから始まり、関わる人の体制を形成しながらその人たちが想いを持って運営できる施設をデザインしていくという参加のプロセス設計は、時間はかかりながらも、高齢化の進む中心市街地において、新しい人材をまちづくりに呼び込み、活躍してもらうという目的においては理想的なプロセスです。
この取組によって、協働のノウハウも培われたとのことでした。


○組織体制について

立ち上げをプロデュースしたNPOのプランナーが担当理事として全体をまとめ、常勤1名(施設長)、非常勤3〜4名で公園管理とショップを回しています
初代施設長は計画ワークショップに参加した地元園芸家、2代目は全国にガーデナーを公募して、若さと専門性を備えた人材を獲得したといいます。NPO専従は施設長一人ですが、他にも主に子育ての終わった数人の女性スタッフが、庭仕事、ショップ運営、講座やイベント企画、広報にあたっています。経理部門は、商店経営者のNPO理事が裏方で支えています。
その他、多くのボランティアスタッフが、この公園の維持管理や、企画運営に携わっています。


小諸駅のすぐ目の前にある停車場ガーデン

○地元の理解と観光客の増加

これまでの経過で、やはり地元の理解は課題として挙げられていました。地元商店街との調整や音の問題もあるそうですが、地道に説明を続けているとのことです。来訪者の実績や良い感想が上がっているので、それをもとに商売に繋げてもらえるように伝えています。
また、現在この公園は、市民と観光客が半々で利用しており、どちらかに偏ることのないように、バランスを取って運営していくことに注意をしているとのことでした。




実際に現地を視察すると、そこにいるだけでも癒やされる憩いの空間となっており、ガーデニングの効果や価値を再認識することができました。子どもたちの通学路になっていることも、非常に意義深いと感じます。松本でも、駅前に留まらず、各所においてこれを参考に展開できる可能性を感じています。

高齢化の進む各地域において、住民の生きがいやコミュニティづくりにもつながる本事例は有効な取り組みであり、いかに初期段階から住民を巻き込み、当事者意識を持ってもらうかというモデルケースとして大変参考となりました。松原モールでも、展開できないかと想像を膨らませていました…。





それでは、また明日。



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