2018年11月01日
松本城南・西外堀の復元が中断となり、芝生による平面整備へ方針転換することに。どうして掘れなくなったのか?
こんばんは、最年少松本市議会議員の青木たかしです。
先日更新した中核市に関する記事が、ヤフーニュースにも取り上げられました。「松本市が目指そうとしている中核市とは何なのか」について、現段階で市が説明していることと、今後の課題についてまとめてありますので、ご一読いただけますと幸いです。
ナガブロだけでなく、選挙ドットコム上のブログやホームページも更新していますので、こちらもよろしければ御覧ください。
https://go2senkyo.com/seijika/159204
■
今日から、外堀復元事業について書いていきたいと思います。
平成30年7月の議員協議会で、南・西外堀を復元することができなくなったことがわかりました。原因は、平成29年度8〜9月と平成30年1〜3月に行った土壌汚染調査で、鉛及びその化合物の土壌溶出量が、基準値を0.001〜0.021mg超えていると判明したことです。
1,なぜ土壌汚染があると掘れなくなるの?
まず、病院や食品加工場を設置するわけでもなく、お堀を掘るということなのに、どうして土壌汚染が関係するのかという疑問が生じるのではないでしょうか。
土壌汚染対策法では、3,000㎡以上の土地で、汚染基準値を超えている土地を「掘る」(形質を変更する)場合には、その区域を汚染区域として指定し、掘ったりすることでその汚染を周りに拡散させないため、汚染の適切な処理をしなければならないこととされています。
そして、その汚染除却にかかった費用は、その土地を汚染させた人が負担することとなっています。
しかし、調査分析の結果、広く均一に汚染が分布していることと、汚染が基準値の10倍以下であることから、自然由来の汚染(原因は不明)であることがわかりました。この汚染は、かつての堀底のあたりに分布しているようで、地表近くの土壌は汚染されていないこともわかっています。また、周辺の井戸や飲水にも現時点では溶出していないことも明らかとなりました。
2,自然由来の汚染であっても、土地所有者の責任に。市が除却費用を出せない理由。
自然由来なら、汚染させた原因となる人がいないので、問題がなさそうに見えます。
しかし、平成22年に土壌汚染対策法が改正され、自然由来であっても、健康被害の観点からは汚染であることには変わりがなく、土壌汚染対策法が適用されることとなりました。そうなると、この区域を汚染区域として指定をしなければならなくなり、汚染が拡散しないようにするため、鉛の汚染を綺麗にする必要が生じます。
この時、この綺麗にする費用を誰が持つことになるかといえば、土地の地権者が原因の汚染ではないため、市が費用負担していいように思えます。
しかし、今度は民法570条において、「売主の瑕疵担保責任」という法律があり、売買した土地に隠れた問題(瑕疵)があった場合、その問題を取り除くための費用は売主(今回は地権者)が負担しなければならないこととされています。(契約書上にも、この「瑕疵担保責任」の条項は明記されています。)
その費用は、少なくとも4億6千万円にのぼるとされていて、土地の購入費用がそれだけ減額されることとなってしまいます。
これを市が税金を使って綺麗にする費用を支払った場合、一部の市民への便宜供与にあたり、住民訴訟が起こされる可能性が高くなることから、市でも費用を出せず、売主にも請求できないという事態が生じました。
3,用地購入の目的を「平面整備」として方針転換し、お堀復元は将来課題へ。
法律上、土地の瑕疵が見つかってから1年以内(土壌汚染発覚が29年9月であったため、翌年の30年9月までの間)に、買主は売主に損害賠償を請求することができるとされていて、これをしなかった場合、先程の市民への便宜供与にあたってしまうという状況に置かれることになった松本市。
そこで、当初の方針を転換し、残り半分の用地取得はこのまま目指すものの、掘る予定であったお堀の部分は、たとえば芝生を張って公園のような使い方のできる場所とする、平面整備の方針へと切り替えることとなりました。
これが7月の議員協議会に諮られることとなり、私を含め、何人かの議員が検証不足や住民が知らない段階での了承ができないことから、継続協議を求める立場を取りましたが、20対10の賛成多数で平面整備の方針を了承すると議会で集約されました。
この場で、市長からは「断腸の思い。本意ではないが、外堀復元は、将来の課題として取り組むことを強く望む。」との説明がありました。
外堀を芝生整備したイメージ模型
4,内堀からも汚染が検出され、外堀も汚染されている可能性は認識されていた
これまでの経過を時系列で見てみます。
平成19年 菅谷市長が外堀復元事業の着手を表明
平成22年 土壌汚染対策法が改正され、自然由来の汚染も対象となる
平成25年 外堀用地取得開始・内堀の堆積泥を除却する際に基準値を超えるヒ素が検出される
平成26年 外堀用地内の土壌汚染調査(地歴調査)を実施し、内堀同様の掘であることから、自然由来の土壌汚染が存在する可能性がある土地として認識
平成29年 外堀用地の25地点で土壌汚染調査(土壌調査)を実施したところ、9地点から基準値を超える「鉛及びその化合物」を検出。
土壌汚染調査の結果の資料
本来であれば、広大な事業用地で自然由来の汚染が広がっている以上、汚染除却費用は売主に請求しなければならないため、この事業は成立しないこととなります。議員協議会でその点を指摘した所、見通しが甘いと言われればそうなるとの答えもありました。
しかし、平成30年7月時点で48%の用地取得を終え、これまでに14億9000万円の事業費(うち8割にあたる約12億円が国庫補助金、残りは市費)をかけて進められてきました。そして、松本城の南・西外堀を復元するために、底に住んでいた地元住民に立ち退きの協力を仰ぎながら取り組まれてきたもので、いわば痛みを伴う事業でもありました。市長も、「相当の覚悟」を持って取り組んできたと発言しています。
ここまで事業が進んでしまっていて、市民の間でも強い期待感があったものであり、公費も投入されてきた事業であることから、なんとかして掘れる方法はないか、現在私も研究を進めています。
次回以降、今市に求められていることと、どうしたらお堀を掘ることができるのかについて、書いていきたいと思います。
それでは、また明日。
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先日更新した中核市に関する記事が、ヤフーニュースにも取り上げられました。「松本市が目指そうとしている中核市とは何なのか」について、現段階で市が説明していることと、今後の課題についてまとめてありますので、ご一読いただけますと幸いです。
ブログ記事をYahooニュースで取り上げていただきました。→ 松本市が目指す中核市とは何か?具体的なメリット・課題と、なぜ今、移行しなければならないのか。(選挙ドットコム) - Yahoo!ニュース https://t.co/fcSX5E6osl @YahooNewsTopics
— 青木たかし(最年少松本市議会議員) (@aoki1230) 2018年10月25日
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平成30年7月の議員協議会で、南・西外堀を復元することができなくなったことがわかりました。原因は、平成29年度8〜9月と平成30年1〜3月に行った土壌汚染調査で、鉛及びその化合物の土壌溶出量が、基準値を0.001〜0.021mg超えていると判明したことです。
1,なぜ土壌汚染があると掘れなくなるの?
まず、病院や食品加工場を設置するわけでもなく、お堀を掘るということなのに、どうして土壌汚染が関係するのかという疑問が生じるのではないでしょうか。
土壌汚染対策法では、3,000㎡以上の土地で、汚染基準値を超えている土地を「掘る」(形質を変更する)場合には、その区域を汚染区域として指定し、掘ったりすることでその汚染を周りに拡散させないため、汚染の適切な処理をしなければならないこととされています。
そして、その汚染除却にかかった費用は、その土地を汚染させた人が負担することとなっています。
しかし、調査分析の結果、広く均一に汚染が分布していることと、汚染が基準値の10倍以下であることから、自然由来の汚染(原因は不明)であることがわかりました。この汚染は、かつての堀底のあたりに分布しているようで、地表近くの土壌は汚染されていないこともわかっています。また、周辺の井戸や飲水にも現時点では溶出していないことも明らかとなりました。
2,自然由来の汚染であっても、土地所有者の責任に。市が除却費用を出せない理由。
自然由来なら、汚染させた原因となる人がいないので、問題がなさそうに見えます。
しかし、平成22年に土壌汚染対策法が改正され、自然由来であっても、健康被害の観点からは汚染であることには変わりがなく、土壌汚染対策法が適用されることとなりました。そうなると、この区域を汚染区域として指定をしなければならなくなり、汚染が拡散しないようにするため、鉛の汚染を綺麗にする必要が生じます。
この時、この綺麗にする費用を誰が持つことになるかといえば、土地の地権者が原因の汚染ではないため、市が費用負担していいように思えます。
しかし、今度は民法570条において、「売主の瑕疵担保責任」という法律があり、売買した土地に隠れた問題(瑕疵)があった場合、その問題を取り除くための費用は売主(今回は地権者)が負担しなければならないこととされています。(契約書上にも、この「瑕疵担保責任」の条項は明記されています。)
その費用は、少なくとも4億6千万円にのぼるとされていて、土地の購入費用がそれだけ減額されることとなってしまいます。
これを市が税金を使って綺麗にする費用を支払った場合、一部の市民への便宜供与にあたり、住民訴訟が起こされる可能性が高くなることから、市でも費用を出せず、売主にも請求できないという事態が生じました。
3,用地購入の目的を「平面整備」として方針転換し、お堀復元は将来課題へ。
法律上、土地の瑕疵が見つかってから1年以内(土壌汚染発覚が29年9月であったため、翌年の30年9月までの間)に、買主は売主に損害賠償を請求することができるとされていて、これをしなかった場合、先程の市民への便宜供与にあたってしまうという状況に置かれることになった松本市。
そこで、当初の方針を転換し、残り半分の用地取得はこのまま目指すものの、掘る予定であったお堀の部分は、たとえば芝生を張って公園のような使い方のできる場所とする、平面整備の方針へと切り替えることとなりました。
これが7月の議員協議会に諮られることとなり、私を含め、何人かの議員が検証不足や住民が知らない段階での了承ができないことから、継続協議を求める立場を取りましたが、20対10の賛成多数で平面整備の方針を了承すると議会で集約されました。
この場で、市長からは「断腸の思い。本意ではないが、外堀復元は、将来の課題として取り組むことを強く望む。」との説明がありました。
外堀を芝生整備したイメージ模型
4,内堀からも汚染が検出され、外堀も汚染されている可能性は認識されていた
これまでの経過を時系列で見てみます。
平成19年 菅谷市長が外堀復元事業の着手を表明
平成22年 土壌汚染対策法が改正され、自然由来の汚染も対象となる
平成25年 外堀用地取得開始・内堀の堆積泥を除却する際に基準値を超えるヒ素が検出される
平成26年 外堀用地内の土壌汚染調査(地歴調査)を実施し、内堀同様の掘であることから、自然由来の土壌汚染が存在する可能性がある土地として認識
平成29年 外堀用地の25地点で土壌汚染調査(土壌調査)を実施したところ、9地点から基準値を超える「鉛及びその化合物」を検出。
土壌汚染調査の結果の資料
本来であれば、広大な事業用地で自然由来の汚染が広がっている以上、汚染除却費用は売主に請求しなければならないため、この事業は成立しないこととなります。議員協議会でその点を指摘した所、見通しが甘いと言われればそうなるとの答えもありました。
しかし、平成30年7月時点で48%の用地取得を終え、これまでに14億9000万円の事業費(うち8割にあたる約12億円が国庫補助金、残りは市費)をかけて進められてきました。そして、松本城の南・西外堀を復元するために、底に住んでいた地元住民に立ち退きの協力を仰ぎながら取り組まれてきたもので、いわば痛みを伴う事業でもありました。市長も、「相当の覚悟」を持って取り組んできたと発言しています。
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